Partager

4   執務室にて

Auteur: KAZUDONA
last update Date de publication: 2025-11-22 15:38:04

 ルナフレアに見送られて、玉座の間の裏手にある王の執務室までやってきた。カリナが廊下を歩いている間、やたらと兵士や城仕えの侍女達に「可愛い」「あの子がカーズ様の妹君か」などと噂話をする声が聞こえてきた。ひらひらの衣装を着ているだけで恥ずかしいのに、何とも言えない気分になる。

 執務室の入り口のドアの両脇にはアステリオンと近衛騎士団長のクラウスが待っていた。

「気にし過ぎですよクラウス。陛下とも顔見知りのようでしたし、カーズ様の妹君なら滅多なことなど起こりませんよ」

「いや、あの娘は何か異常な力を持っている。俺の剣が掴まれただけで動かせなかったのだ。妙な力を使ったに違いない。何かあれば我々が陛下をお守りしなければ……」

「陛下がそう簡単にやられるとは思いませんが……。おや、到着ですね。カリナ様、では此方へどうぞ」

 アステリオンがドアを開けて中へ導いてくれる。クラウスは憮然とした表情でカリナの方を見た。

「妙な真似をするなよ。陛下に何かあれば許さんからな」

「いや、ただ呼ばれたから話をしに来ただけなんだけど」

「そんな衣装を着て、陛下を誘惑でもする気なのか?」

 カリナの来ているファンシーな衣装を見て、クラウスは意味不明なことを言い、右手を剣の柄にかけている。カリナはそんなことを想像するだけで気持ち悪くなった。

「いや、しないから。話するだけだから」

 アステリオンに一礼をして、クラウスをじとーっと見た。

「お前達、いつまで私を待たせる気だ!」

 中からカシューが怒った演技の声を出した。

「「申し訳ありません!」」

 二人は謝罪をすると、カリナを部屋の中に送りドアを閉めた。

 執務室のデスクにいるブルーの髪色をしたカシューがカリナの方を見て、もう邪魔は入らないなという風に笑顔になった。100年経過しているということだがまるで年老いていない。かつて共に冒険をしたときの姿のままだ。

「国王のロールプレイをこなすのも大変そうだな」

 デスクの前のソファーにどかっと腰掛けてからカリナが言った。

「そうなんだよね、我ながらよくやってると思わない?」

 カシューは恰好を崩した口調で答えた。一応国王をやっているので、配下の前では威厳のある態度で通しているのだ。それが久々に現れた友人の前で素に戻る。

「そう思う。俺には無理だ」

「だったらもっと褒めてよー。君達がいない間大変だったんだからさー」

 デスクに突っ伏してぐだぐだと愚痴をこぼすカシュー。

「おー、よしよし。偽物のおっぱいでいいなら揉ませてやるぞー」

 友人同士のたわいもない冗談が飛び交う。

「いやいや、それはさすがにキツイ。で、色々聞きたいことがあるんでしょ?」

 ふっと真面目な顔になって互いに腕を体の前で組んだ。

「ああ、まずこの世界はどうなっている? NPCもまるで生きているみたいな反応をするし、100年経っているとか言うし、ログアウトもできない。何が何やらさっぱりだ」

「うーん、まあそうだね……。確かにこれまでのNPCだった者達は僕達と同じで生きている。人格もちゃんとある。最初は僕も多分君と同じでただのアップデートがあったのかと思ったよ」

 ふぅと溜め息を吐きながら、カシューは真面目な表情になって語り始める。

「100年前、初期五大国に悪魔の大軍が攻めて来たんだ。人類は多大な犠牲を払って何とかこれを撃退したんだけど、そのときからPC達はほとんど姿を消してしまったんだ。うちの国も被害は甚大。他国とPvPなんてやってる場合じゃなくなってね。今後に備えて国力を蓄えている最中だよ。またいつ悪魔達が攻めて来るか分かったもんじゃないからね」

「防衛力では誰も太刀打ちできない初期大国がそこまでの被害を出したってのか? 嘘だろ……」

 初期五大国はプレイ開始時にとりあえずどこかを選択してスタートするという、MMOではよくある初期設定である。その分その大国は防衛NPCのレベルが異常に高く、戦争を仕掛けても一方的にボコボコにされる。そのため、PvPで五大国を倒すのがある意味エンドコンテンツに近いものという扱いである。その大国達が甚大な被害を受けるということは攻めて来た悪魔のレベルが異常か、数が異常かのどちらかであろう。

「で、カーズ、いや今はカリナのキャラか。この100年間、君は今まで何をしていたんだい?」

「何をしてたと言われてもなあ……。ちょっとログアウトして入り直したら今の惨状だったってだけだぞ。まさかほんの数分ログアウトしていただけでそんなことになっているなんて、意味がわからないのはこっちだって。しかもコマンドが機能しないし、ステータスも開けないんだ」

 目の前の空間を指でスワイプする。今までならそれで現在レベルやステータスなどが表示されていたのだ。それが全く機能しない。

「あー、それね。多分レベルとかステータスの概念は無くなってるよ。現実世界と同様に鍛えた分しか強くなれない。スキルは覚えたり使えるけど。でもね、冒険者の腕輪、ここをこうすると……」

 カシューが左手首にある細い腕輪の赤いボタンを押す。

「ほら、フレンドリストやマップ、所属ギルドや王国なんかが見れるよ。そして黄色のボタンでアイテムボックスも開ける。残念ながらログアウトなんかの機能はもれなくなくなってるけどね」

 カシューがやった様に、左腕にある腕輪を操作すると、カリナの眼前に各種情報がウインドウの様にオープンした。やはりログアウトのボタンはない。

「ね? あ、あとアイテムはアイテムボックスから直接取り出せるよ。制限は今のところないみたいだから、大切なものは今までみたいに個人アカウントの共同倉庫とかに入れてたりなんかすると……」

「ほう、入れてたら?」

「それが使えなくなった。だから持ち歩かないのなら部屋にでも置いておくことだね。はあー、僕のコレクションの宝剣や鎧やらレアドロップが全部水の泡だよー」

「ま、マジか……。俺もカーズのときに集めた聖剣やら魔剣が入れっぱなしだったぞ」

 アイテムはボックスに持ち切れない物は全てアカウント共有のサーバー倉庫に幾らでも保管することができた。有料アイテムではあるのだが。どうしても捨てるのがもったいない物なんかは全てそこに突っ込んであった。レアアイテムなどが一瞬で消え去ってしまった事実を知ってショックを受ける。

「まぁ、もうどうしようもないから諦めたよ。それに今は国家運営が第一だから、僕が勝手に旅に出る訳にもいかないからね。権力者は大変だよー」

 カシューの心が泣いているのをカリナは感じた。いや自分も大切なコレクションが消えたことはショックなのだが、カシューの方が身動きが取れない分不憫に感じられる。

「うん、まあそれは仕方ないから諦めるとしよう。また手に入れればいいだけだしな。ところで、もしこの世界で死んだらどうなるんだ? 教会の女神像の前で復活するのか?」

 ゲームが現実になっているのは、もう散々理解できた。だがゲーム内の死が本当の死になるのかは別問題である。

「うーん、死んだことがないからわからないけど、多分本当に死ぬんじゃないかなと思う。100年も経った時間を生きてると周りの人間と死別することだってたくさんあったからね」

「でもそれはNPCの話だろう? 俺達はPCだぞ。まさか……」

 カリナはそう言うと腰から片手剣のティルヴィングを左手で抜いた。その刃を右手の甲に近づける。スッと軽く斬り付けると、そこから真っ赤な鮮血がじわりとあふれ出た。鋭い痛みに血が流れる感触。ぞわっとした感覚がして、すぐに回復魔法で傷を塞いだ。

「ちょっと、何やってるのさ! そんなの血が出るに決まってるじゃないか! しかもそんな切れ味の剣で斬るとか、手首が飛んでもおかしくないよ!」

 カシューの反応と自身の身体で感じた痛覚で全てを悟った。

「済まない。ちょっと気になったんだよ。でも理解した。痛覚もちゃんとあるし、血液がエフェクトではなくてちゃんと流れている。ゴブリンを斬った時も肉を斬り裂く感触がしっかりとあったし、返り血まで浴びたんだ。普段なら消える死体も残っていた。これは現実だ。致命傷を負えば死ぬ……」

「わかってくれて良かったよ。しかし相変わらず無茶するんだからさあ、寿命が縮まったよ」

 もはやVRMMOなんかではない。これはリアルな現実世界だ。己の血を流して改めて理解できた。

「まぁ、わかってくれたのなら良かったよ。だから対人戦になっても無闇に剣を抜くのはお勧めしないよ。魔物相手なら別だけどね」

 ほっと一息をついて、カシューは安堵した。

「で、話は変わるけど、やっぱりその恰好は恥ずかしいかい?」

 カリナが着ているフリフリの衣装を指差しながらカシューがにやけた。我に返ったカリナの顔が赤くなる。

「お前なあ……。当たり前だろ、わざわざメイド隊を部屋まで寄こしてくれて。これじゃまるで魔法少女だよ」

「あはは、リア達はノリノリだったからねぇ。今はもう次の素敵衣装の制作に取りかかってるみたいだよ」

 ニヤニヤとカシューが笑う。「今後も着せ替え人形役よろしくね」と悪戯好きな笑顔で言う。

「スカートのときは股を閉じた方がいいよ」

「うるさいな。あ、そうだ、アバターボックス持ってるか? あれがあれば男キャラに作り直せる!」

「課金アイテムのやつだよね、まあ一応一つ持ってるけど……」

 そう言ってカシューはアイテムボックスから課金アイテムのアバターボックスを取り出した。そのままカリナの目の前に立ち上がって持ってくる。

「それだ、頼む譲ってくれ! 何でもするから!」

「まあ別にあげるのは構わないんだけどねー」

 そう言ってカリナはその箱に手を伸ばしたが、手が宙を切る。そして勢い余ってカシューを押し倒してしまった。ドスンという音が室内に響く。

「何事ですか、陛下! なっ、貴様やはり本性を現したな!」

 クラウスが剣を抜いて室内に飛び込んで来た。その後ろからやれやれという顔でアステリオンも顔を出す。

 カシューの腰の上にカリナが跨がっている状態。変な疑いを掛けられても仕方がない体勢だった。

「まぁまぁ、クラウス。一見彼女が陛下を押し倒したかの様に見えますが、陛下の手を見て下さい。しっかりと両手で揉んでいらっしゃいます。どうせ何かの拍子に二人して尻もちを着いただけでしょう。さあ、お邪魔してはいけません。我々は席を外しますよ」

 なんとも冷静な分析である。しかもカシューの両手はカリナを押しのけようとして、その双丘に押し付けられていた。これではどちらが悪いとも言えない。

「お前ら、何か勘違いしてないか?」

 入って来た二人にやれやれという顔で応じるカリナ。

「そうだぞ、私がそのような不埒な真似をするわけがなかろう! ただの事故だ。わかったらさっさと出て行け!」

 国王らしい口調でカシューが反論する。

「いいではありませんか、カリナ様ならカーズ様の妹君。血筋の問題はありませんよ」

「うむむ……、これは陛下のお世継ぎの問題でもあるのか……」

 ぶつぶつと言いながら二人は退室して行った。立ち上がるカリナとカシュー。はー、と長いため息を吐く。

「わかったでしょ、課金アイテムは譲渡禁止。ゲーム時代からそうだったじゃないか」

「そうだった……。気が動転していた。すまん」

 ソファーに向かい合って腰掛ける。そのとき隣の部屋から大人びた女性の声と共に王国の魔法使い筆頭のエクリアが入って来た。ウェーブの掛かった金髪のロングヘアー。魔法使いらしい白いローブだが、インナーは少々露出が多いセクシーな衣服となっている。彼女もまたカリナとは旧知の仲である。

「カリナが帰って来たってのは本当か?!」

 まだまだ執務室での談義は終わりそうにない。

Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application

Dernier chapitre

  • 聖衣の召喚魔法剣士   127  剣術大会閉幕

     ザルバディオ・カルマの消滅により、再び静寂が戻ったコロシアム。だが、それは恐怖による沈黙ではない。偉大なる勝利と、平和の到来を噛みしめる安堵の静寂だった。 舞台上の瓦礫が片付けられ、表彰式の準備が整う中、実況席から一人の女性が軽やかな足取りでレオン王の下へと駆け寄った。   実況のマグダレナだ。遠目には分からなかったが、間近で見る彼女の容姿は、自ら看板娘を名乗るに相応しい華やかさを持っていた。 艶やかなエメラルドグリーンのロングヘアが背中で揺れ、その肢体はイベントを意識した大胆な衣装に包まれている。身体のラインを強調する光沢のある黒いバニースーツに、引き締まった脚線美を際立たせる網タイツ、そして黒いハイヒール。 彼女は愛嬌たっぷりの笑顔で、魔法で増幅されたマイクを差し出した。「陛下! 会場のみんなに声が届くよう、これを使って下さい!」 レオン王は目を丸くし、豪快に笑った。「おお、これは気が利かなかったな。感謝するぞ、マグダレナ」 王はマイクを受け取ると、威厳に満ちた声を会場中に響かせた。「これより! アレキサンド剣術大会、表彰式を開始する!!」 王の宣言と共に、観客席からは割れんばかりの拍手が巻き起こった。舞台中央。真紅の戦装束、バトルドレスに身を包んだアリアと、泥だらけになりながらも凛と立つカリナは王の前に進み出ると、恭しく片膝をつき、その言葉を待つ。 レオン王はまず、アリアへと視線を向けた。「先ずは女神アリア殿。その凄まじい強さと、最後に見せた悪魔退治……感謝してもしきれぬ働きであった。この国を、いや、世界を救ったと言っても過言ではない」 王は近衛兵が捧げ持っていた、豪奢な装飾が施された一振りの剣を手に取る。「優勝の約束として、かつてこの国の英雄が使っていた『聖剣ジュノワーズ』を授与する。受け取られよ」 アリアは立ち上がり、その美しい剣を受け取った。だが、その表情に高ぶりはなく、あくまで涼しげだ。「私は女神として、当然のことをしただけですよ。それに、この大会に出たのも、悪に立ち向かえる力のある人間がどの程度なのかを見定めるためでしたから」 悪びれもせず言い放つアリアに、レオン王は一瞬言葉に詰まり、苦笑する。「そ、そうか……。だが、この国を救ってくれたことは紛れもない事実。深く感謝する」 王が深々と頭を下げると、アリアはに

  • 聖衣の召喚魔法剣士   126  神衣と神器

     熱狂と興奮がピークに達した決勝戦。だが、その余韻を無惨に切り裂くように、禍々しい闇が舞台を侵食した。『な……何が起こっているのでしょうか!? 決勝戦が終わった舞台に、突如として黒い影が……!』 マグダレナの悲鳴のような実況が響く。観客達もパニックに陥り、悲鳴を上げて逃げ惑う者、恐怖で腰を抜かし立ち尽くす者で会場は瞬く間に混沌と化した。「悪魔だ……! 本物の悪魔が出たぞ!」「逃げろ! 魂を喰われるぞ!」 その混乱の中、解説席のレオン王が立ち上がり、声を張り上げた。『うろたえるな! 皆の者、落ち着け! まさか悪魔が直接乗り込んで来るとは……! だが、近衛騎士団、すぐに観客の避難誘導を! 決してパニックになるな!』 王の必死の呼びかけも、圧倒的な恐怖の前では力を持たない。カリナ達の貴賓席も騒然となっていた。「あれが……、災禍六公……?! エデンを襲撃した悪魔の一味よ!」 カグラが目を見開き、震える声で叫ぶ。彼女の脳裏には、カシューから聞いた情報が警鐘のごとく響いていた。エデンを襲撃した悪魔の一味。エクリアが禁呪レベルの破壊魔法で消滅させたと聞いた一体。それと同じレベルの存在が現れたのだ。 以前ガリフロンド公国で死闘を繰り広げた災禍伯メリグッシュ・ロバス。目の前の悪魔が放つプレッシャーは、その怪物に勝るとも劣らない。そんな絶望的な存在が、なぜこんな場所に現れたのか。カグラは戦慄を抑えきれなかった。「とんでもない力を感じるぞ……あの悪魔は……」 カーセルが顔を青ざめさせ、剣の柄に手をかけるが、その手は震えている。カインも歯を食いしばった。「おいおい、冗談だろ……? あんなのが幹部クラスだってのかよ……」「空気が……重い。息をするだけで肺が焼けるみたいだわ」 ユナが胸元を押さえて苦しげに呻く。テレサも怯えたように身をすくませた。「あんな禍々しい気配……初めてです……」 エリック達の席でも、同様の動揺が走っていた。「まさか、こんなところにまで単身で乗り込んでくるとはな……! 正気じゃねえ!」 エリックが脂汗を流す。隣のディードが耳を押さえてうずくまる。「嫌な音……。世界が悲鳴を上げている音がする……」 「団長……あいつ、私達とは次元が違い過ぎます……!」 テレジアも絶望的な表情で首を振った。 舞台中央。闇の中から

  • 聖衣の召喚魔法剣士   125  女神との激突

     熱狂と興奮が飽和するコロシアム。   準決勝第二試合の衝撃的な決着から一息つき、休憩終了の鐘が高らかに鳴り響いた。 魔法マイクを握りしめたマグダレナが、震える声で告げる。『さあ、皆様! いよいよ、この大会のクライマックス! 決勝戦の幕が開きます! これまで無傷で勝ち上がって来た両者が、ついに激突します! 一体どんな戦いになるのか、私の実況では言葉が追いつかないかもしれません!』 解説席のレオン王も、深く頷きながら前を見据えた。『うむ。英雄と謎の女神……今ここアレキサンドで今、最も注目される二人の激突だ。決勝に相応しい、最高のカードと言えるだろう』 カリナ達がいる貴賓席。カリナが静かに立ち上がった。その背中を、カグラがぎゅっと抱きしめる。「カリナちゃん……気を付けてね。でも、あの余裕ぶっこいた女神の顔色、変えてきてやりなさいよ!」 「ああ。ここまで来たら、全力でぶつかるだけだ。ありがとう、カグラ」 カリナはカグラの手を握り返し、仲間達の顔を見渡した。 エリアが拳を突き上げる。「行けーっ! カリナちゃん! 私たちの分まで!」「おう! 頼んだぜ!」「カリナ嬢ちゃん、武運を」「カリナちゃん、頑張って下さい!」 ロック、アベル、セレナの声援。更にルミナスアークナイツの面々も声を張り上げる。「カリナちゃん! 僕達も全力で応援するからね!」「負けんじゃねーぞ! カリナちゃん!」「カリナちゃん、ファイト!」「頑張って下さい、カリナさん!」 カーセル、カイン、ユナ、テレサ。そしてケット・シー隊員も「隊長、応援するにゃー!」と叫んでいる。カリナは彼らに力強く手を振って応え、舞台へ足を進めた。 一方、アリアがいる貴賓席。アリアは優雅に髪をかき上げた。「ようやく決勝ですか。さて、カリナさんがどうくるのか、楽しみですねぇ」 余裕の笑みを浮かべ、彼女もまた舞台へと向かう。その様子を、エリック達が見送っていた。「……いよいよだな」「ええ。カリナさんの剣が、あの方に届くのか……見ものです」「人間離れした戦いになるでしょうね」 エリック、テレジア、ディード。彼らもまた、固唾を飲んでこの一戦を見守ろうとしていた。 二人の戦士が、まばゆい陽光の下へと現れる。『まずは、エデンが誇る特記戦力にして、ザラーの街を救った可憐な戦乙女! 召喚魔法剣士、カリナァァァーッ!

  • 聖衣の召喚魔法剣士   124  氷の剣士と女神の剣技

     熱い興奮が渦巻くコロシアム。   準決勝第一試合の余韻が残る中、実況のマグダレナが魔法マイクを握り直し、高らかに声を張り上げた。『さあ、息つく暇もありません! 続いて行われるのは準決勝、第二試合! 決勝でカリナ選手と戦うのは、果たしてどちらの選手になるのでしょうか!』 エリック達が陣取る貴賓席。出番を控えたテレジアが、静かに愛剣の点検を終えて立ち上がった。その背中に、先ほど敗れたばかりの団長、エリックが声をかける。「テレジア、行けるか?」 「ええ、団長。……敵討ち、とはいかないかもしれませんが」 「バカが、俺のことはいい。それより……あいつは得体が知れない。気を付けろよ」 エリックの表情は真剣そのものだった。長年の勘が、対戦相手であるアリアの異常性を警告しているのだ。「ええ、分かっています。これまでも全て一撃、それも目にも止まらぬ速さで試合を決めて来た異常な存在……。心して、行ってきます」 テレジアは凛とした表情で頷き、扉を開けて舞台へと向かった。 一方、アリアが陣取る貴賓席。アリアは軽く屈伸をし、伸びをしていた。「んーっ……。さてと。今回は純粋に剣技のみでやりましょうかね」 彼女は誰に聞かせるでもなく独りごち、楽しそうに笑みを浮かべて舞台へと歩みを進める。『まずは、予選からここまで、全ての試合を一撃のもとに決着させてきた謎の美女! 自ら女神を名乗るアリア! その真紅の装備に、今度こそダメージが入ることはあるのでしょうかーっ!?』 観客の視線が一斉に注がれる中、アリアが優雅に手を振って登場する。その余裕綽々とした態度は、これから死闘に赴く戦士のそれではない。まるで庭の散歩にでも来たかのようだ。『対するは、先程のエリック選手と同じ、武大国アーシェラのAランクギルド『ドラゴンベイン・オーダー』所属! 氷の魔法剣士、テレジアァァッ!!』 対面から、一陣の涼やかな風と共にテレジアが現れる。   淡い水色のセミロングヘアが風に揺れ、氷のような青銀のライトアーマーが陽光を反射して輝く。青い膝丈のスカートと白いブーツが、彼女の可憐さと剣士としての凛々しさを引き立てていた。 その長い耳と整った顔立ちは、彼女が高貴なエルフであることを示している。腰には、細身のレイピアに近い片手剣が帯びられている。 解説席のレオン王が頷いた。『うむ。剛剣のエ

  • 聖衣の召喚魔法剣士   123  黒衣の魔剣使い

     準決勝を控えた休憩時間。貴賓席は、先ほどの熱戦の余韻と、次なる戦いへの期待に満ちていた。中央のテーブルを囲むように、シルバーウイングとルミナスアークナイツの面々が集まっている。「ここからは、カリナちゃんを一生懸命応援するよ! みんな!」 敗退したばかりのエリアが、真っ先に声を上げた。その表情に暗さはなく、親友の背中を押す決意に満ちている。ロックがいつまでも食べているサンドイッチを握り拳で掲げた。「もちろんだ! がんばれよカリナちゃん! エリアの分まで頼んだぜ!」「うむ、健闘を祈る。相手は未知数の強敵だが、カリナ嬢ちゃんなら大丈夫だろう」 アベルも深く頷き、どっしりとした声でエールを送る。テレサは、どこか夢見心地な様子で頬を紅潮させていた。「はぁ……カリナちゃんの戦いに集中できるなんて……眼福です。あの流麗な魔法剣技、一瞬たりとも見逃せません」「そうだね。僕達も一生懸命応援するよ。カリナちゃんの勝利を信じてる」 カーセルが穏やかに微笑む。カインはニカっと笑い、背負った槍の柄を叩いた。「まあ、カリナちゃんが負けるところなんて想像がつかねーけどな!」「でも、油断は禁物よ。あの大剣使いも中々やり手っぽいわ」 ユナが少し真剣な顔つきで釘を刺す。テレサも頷き、言葉を継いだ。「そうですね。それでも、カリナさんが勝つところを見たいです。私達の希望ですから」「隊長が負けるわけがないのにゃ! 最強なのにゃ!」 足元でケット・シー隊員が胸を張り、ふんすと鼻を鳴らす。カリナは仲間達の温かい言葉に目を細め、力強く頷いた。「みんなありがとう。ベストを尽くすよ」 その時、カグラがそっとカリナに近づき、周囲に聞こえないよう小声で囁いた。「……相手がもし『PC』なら油断はできないわ。最初から思いっきりやってやりなさいよ、カリナちゃん」「ああ、油断はしないよ。一合打ち合えば、それだけでわかるだろうさ」 カリナは静かに闘志を研ぎ澄ませる。相手が自分と同じ領域にいる存在かもしれないという予感が、心地良い緊張感となって全身を巡っていた。 やがて、休憩終了を告げる鐘が高らかに鳴り響いた。『それでは、準決勝第一試合を開始いたします!』 マグダレナの声が会場の空気を引き締める。二人の戦士が、それぞれの貴賓席から舞台へと向かう。『まずは、エデンが誇る美少女召喚魔法剣

  • 聖衣の召喚魔法剣士   122  カリナ対エリア

     休憩時間。カリナ達がいる貴賓席では、和やかなティータイムが始まっていた。「次はカリナちゃんとの戦いかー。……やっとだね」 大会スタッフが用意した紅茶を一口飲み、エリアが不敵な笑みを浮かべる。その瞳は、親愛なる友に向ける優しさと、一人の剣士としての闘争心が入り混じっていた。「ああ。楽しみだな、エリア」 カリナもまた、カップを置いて微笑む。言葉数は少ないが、その瞳の奥には静かな炎が燃えている。 そんな二人を見て、カグラが胸を張った。「ふふっ、覚悟しなさいよエリアちゃん。私の妹分は強いわよー?」 「それはもちろん知ってますよ、カグラさん。ずっと間近で見て来ましたからね」 エリアはニッと白い歯を見せる。「でも、勝つ気でいきます! カリナちゃんが強いのは百も承知。だけど、私もシルバーウイングの副団長として、簡単に負けるわけにはいかないのよ!」 「おう、威勢がいいこった! まあ、一太刀入れられたら十分だと思ってるけどな!」 ロックがサンドイッチを頬張りながら茶化すと、アベルも深く頷いた。「ああ。あのカリナ嬢ちゃんだ。勝つのは至難の業だろう」 「エリア、貴方の剣技の冴えならいい勝負になると思いますが、カリナちゃんのあの冷徹なまでの先読み……あれを崩せるかどうかですね」 セレナが頬を紅潮させながら、どこか楽しげに分析する。「もうっ! アンタ達、同じギルドメンバーなのに酷いわね!」 エリアが頬を膨らませると、全員がどっと笑った。その温かい笑い声に、ルミナスアークナイツの面々も加わる。「はは……僕もカリナちゃんには手も足も出なかったけど、エリアさんには期待してるよ」 カーセルが苦笑交じりにエールを送る。「そうよエリアちゃん! カリナちゃんは強過ぎるからね。一太刀入れれば実質勝ちみたいなものよ!」 「ああ。あの反応速度と技のキレは異常だ。エリア、気合入れてけよ!」 ユナとカインも、カリナの強さを認めた上でエリアを鼓舞する。テレサは穏やかに微笑み、二人を見比べた。「でも、勝負は時の運もありますから。どちらが勝つにせよ、素晴らしい試合を期待してます」 「ありがとう、テレサの言う通りだな」 カリナとエリアは顔を見合わせ、頷き合った。 ◆◆◆ 休憩終了の鐘が鳴り響く。『さあ皆様、長らくお待たせいたしました! これより三回戦、準々決勝の第一

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status